本研究所では、現行耐震設計規定の背景にある倒壊安全性確保の考え方を踏まえて、以下の手順で、入力と応答(特に柱の部材力と変形)、柱の終局限界変形能力との関係を把握することが目的である。平成9年度には下記の(2)、(3)、(5)を実施した(1)、(4)は平成8年度に実施)。(1)地震動の指標と設定:耐震性能を限界状態(倒壊)に達する地震動入力レベルで評価した。構造物の主軸方向と斜め方向の入力を区別して扱い、2方向地震動に対する安全性は斜め1方向に対する安全性で代表されると仮定した。(2)構造物の設定:構造物は整形な鉄筋コンクリート造建築物として、階数、保有水平レベル、等価粘性減衰の他、純フレーム構造では梁と柱の梁の強度比、耐震壁フレーム構造では壁量(地震力負担)をパラメータにする。今年度は梁にファイバーモデルを用いて、軸方向変形を考慮するモデルと考慮しないモデルを比較した。(3)部材レベルの非線形地震応答解析:構造物を部材レベルで立体構造物としてモデル化し、地震応答解析を行った。(4)等価1自由度系+静的解析による応答結果の推定:縮約1自由度系を設定して、地震動パラメータと等価系応答の関係を定式化した。等価系の応答と静的非線形解析により、柱の部材力と変形の応答を推定する方法を検討した。(5)柱および耐震壁の限界変形と応力の定量化:倒壊の限界状態を定量化した。(a)せん断破壊、(b)軸力保持能力の限界、(c)P-△限界、等を問題にするが、特に終局限界状態の柱の応力に梁の軸方向変形が与える影響を検討した。その結果、隅柱のせん断力は、梁の軸方向変形を考慮しない場合に比べて、1.5倍〜2倍にも上昇し、これらは、梁せい、スパン数を考慮して大略定量化できることを示した。
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