研究概要 |
付着の3次元抵抗機構に基づき,適用範囲の広い付着強度算定式を理論的に導くという研究目標の第一段階として,重ね継手の実験を行った。実験パラメータは,次の4項目とした。 (a)横補強筋化(0.3%と1.2%) (b)中子筋の有無 (c)横補強筋と主筋のあき (d)重ね長さ(主筋径の10倍と40倍) 第3のパラメータは,筆者の解析において中心的な役割を果たす三角梁の検証に特に重要であった。なぜなら,このようなあきを設ければ,三角梁の曲げ剛性と強度が上昇し,付着特性が向上するはずだからである。このような断面は,ハーフプレキャスト部材であれば実際の建物でも容易に作ることができる。 試験体の変形が最大に達したところで,荷重を一定に保ち,低粘性のエポキシ樹脂(蛍光塗料入り)を注入した。樹脂が硬化した後,荷重を除荷し,ダイヤモンドカッターで試験体を切断して,内部破壊状況,特に三角梁の形成の有無を調べた。試験体の載荷は,現有設備で行った。試験体切断は業者に委託した。写真撮影は,ブラックライトを用いて暗室にて行った。 実験の結果,多くの試験体でほぼ予期したような三角梁が確認できた。しかし,補強筋間隔か狭い場合や,あきを設けた試験体では必ずしも三角梁が発生していなかった。また,あきを設けた試験体の強度は,予備計算で予期していたよりもかなり低かった。これらの原因究明については来年度以降の課題としたい。
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