研究概要 |
本研究の成果は次のように要約される。 (1)西宮市域を対象に,震災に関する多様なデータを収集し,GIS(Geographic Information System:地理情報システム)上に展開した。都市施設の被害とそれによる都市機能への影響,ならびに緊急対応活動への影響に関する多元的な分析を進めた。本研究では,災害現象の多重分析を行うとともに,工学的視点と地理学的視点を合わせた横断的な考察を行い,ライフラインの耐震性強化・防災都市の開発などに有用な資料を提供することを最終的に目指した。災害情報処理ツールとしてのGISの活用法とデータベース構築の要点を明らかにした。 (2)阪神・淡路大震災による西宮市の建物被災度判定データと建築瓦礫撤去・新築状況データとの間の相違点を検討し,その過程で明らかになった建物被災データの問題点を整理した。また,震災後の建物被災ならびに復興データの調査・収集において,より迅速で正確なGISデータの構築を行うため,ペン入力式の携帯型パソコンを用いた災害情報収集システムを開発した。これはGISをGPS(Global Positioning System:汎地球測位システム)と共に搭載したもので,西宮市北口町・高木西町を対象地域としてデータ収集試用実験を行い,その長所と問題点をまとめた。 (3)1996年中国雲南省麗江地震(M7.0)による麗江盆地の被害分布と盆地地質構造の関係を把握するために,盆地の基盤岩構造を脈動観測により調査した。盆地境界の基盤岩の急峻な沈降が地震動の増幅に関与している。防災GISの構築のために,震災の被害例の検証と想定地震による被害予測の枠組みの分析を行い,マイクロゾーニングに関わる基盤構造の研究には脈動や重力などの地球物理学的資料が有効に利用できることを示した。
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