(1)人の温熱生理学特性を踏まえた地球上での総合的な熱環境設計の確立への前段階として、工学的応用を図ることを目的として、人体の行動性体温調節に関連した生理学的負担モデルの作成を行った。それは、人体の椅座安静位における環境温度(作用温度)と生理学的負担度の関係として、裸体と着衣の場合について図で表現した。生理学的負担度はW/m^2の次元をもち、環境の中立温度より低温側では顕熱放散量、高温側では発汗熱放散量に相当する。生理学的負担度は、環境が中立温度のときには0、中立温度から離れるにしたがって増大する。裸体の場合の環境の中立温度は27.9℃、夏と冬の中間の着衣量の0.7cloでは24.0℃となった。人間の行動性体温調節について、環境の中立温度を中心として検討が可能となる。 (2)熱環境に関する各種の実態調査を基にして、至適温度の夏と冬の季節差を中心に分析、考察を行って次に示す結果を得た。(1)事務所・学校では、着衣量を含めた至適温度の夏冬の季節差は1.0Kにすぎなかった。(2)住宅では、大阪、ペシャワールの別なく、着衣量を含めた至適温度に6.0Kを超える季節差があった。(3)夏冬の着衣量差による温度への効果を除くと、事務所では至適温度に負の季節差があり、学校ではほとんど季節差がなく、住宅では4.0Kを超える季節差があった。(4)事務所では過剰冷房、過剰暖房が行われていたことが示唆された。(5)住宅では人体に生理学特性である季節順化の生起が明白である。
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