(1)近年の季節順化の軽視の傾向に対して、地球環境への負荷削減に結びつくところから、敢えて季節順化の熱環境設計への導入の必要性を主張するために、その第一歩として、人体の季節順化の環境の中立温度への効果を数値的に表現することを目的として、体温調節モデルにおける二節点モデルを基礎として検討を行った。得られた主な成果はつぎのとおりである。1)基礎代謝量の年間の変動が環境の中立温度を決定し、基礎代謝量が小さいときほど環境の中立おんどは上昇する。皮膚熱抵抗の年間の変化は、環境の中立温度へほとんど影響しない。2)着衣量が年間一定で、基礎代謝量が夏小冬大で年間変動幅が10〜30%であるとき、環境の中立温度は冬から夏にかけて0.9〜2.6K上昇する。3)基礎代謝量の年間変動を考慮すれば、人体の体温調節系に負担を与えない快適環境が、より少ないエネルギー消費で得られることになる。 (2)温熱生理学特性の年内変動と気温の年内変動との関係を明らかにすることを目的として、実験的研究を行った。実験では、1年を通じて同一の熱環境に対する温熱生理学特性を調べた。皮膚温は夏高冬低の季節変動を示し、外気温15℃以上では外気温に追随して変化するが、外気温15℃未満では外気温に無関係にほぼ一定値をとった。鼓膜温は夏低冬高の季節変動を示し、向寒期は向暑期より約0.1K低かった。外殻率αを、α=0.1として求めた平均体温は年間でほぼ平坦になったが、向寒期は向暑期より約0.1K低かった。8月の平均体温、2月の平均体温は、その後も値が持続する傾向がみられた。
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