(1) 近年の季節順化の軽視の傾向に対して、地球環境への負荷削減に結びつくところから、敢えて季節順化の熱環境設計への導入の必要性を主張するために、その第一歩として、人体の季節順化の環境の中立温度への効果を数値的に表現することを目的として、体温調節モデルにおける二節点モデルを基礎として検討を行った。つぎに、温熱生理学特性の年内変動と気温の年内変動との関係を明らかにすることを目的として、実験的研究を行った。実験では、1年を通じて同一の熱環境に対する温熱生理学特性を調べた。 (2) 発汗反応について、つぎの結果が得られた。l)発汗発現閾値に季節順化があるとみなすことができる。2)発汗反応の季節変化特性は、発汗発現閾値体温の季節順化によって引き起こされると推測される。3)発汗反応の季節変化特性は、日平均外気温とほぼ対応させて、4期の段階に分けて理解することができる。4)発汗反応の最大の変化は、第二段階と第三段階、つまり、向暑期と暑熱期の間のある期間に起こっていると考えられる。 (3) 皮膚温と鼓膜温の実測に基づいて不感蒸泄量の年内変動の推論を行い、つぎの結果を得た。1)外殻部の熱コンダクタンスは、向寒期は向暑期より大きいという年間変動を示した。2)夏期に冗進した皮膚での蒸発能力、冬季に低下した皮膚での蒸発能力が、ともにその後も持続する傾向があると解される。3)放熱量も、向寒期は向暑期より大きいという年間変動を示す。
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