(1) 熱環境に関する各種の実態調査を基にして、至適温度の夏と冬の季節差を中心に分析、考察を行って次に示す結果を得た。(1)夏冬の着衣量差による温度への効果を除くと、事務所では至適温度に負の季節差があり、学校ではほとんど季節差がなく、住宅では4.0Kを超える季節差があった。(2)事務所では過剰冷房、過剰暖房が行われていたことが示唆された。(3)住宅では人体に生理学特性である季節順化の生起が明白である。 (2) 温熱生埋学特性の年内変動と気温の年内変動との関係を明らかにすることを目的として、実験的研究を行った。実験では、1年を通じて同一の熱環境に対する温熱生理学特性を調べた。皮膚温は夏高冬低の季節変動を示し、外気温15℃以上では外気温に追随して変化するが、外気温15℃未満では外気温に無関係にほぼ一定値をとった。鼓膜温は夏低冬高の季節変動を示し、向寒期は向暑期より約0.1K低かった。外殻率αを、α-0.1として求めた平均体温は年間でほぼ平坦になったが、向寒期は向暑期より約0.1K低かった。8月の平均体温、2月の平均体温は、その後も値が持続する傾向がみられた。 (3) 発汗反応について、つぎの結果が得られた。(1)発汗発現閾値に季節順化があるとみなすことができる。(2)発汗反応の季節変化特性は、発汗発現閾値体温の季節順化によって引き起こされると推測される。(3)発汗反応の季節変化特性は、日平均外気温とほぼ対応させて、4期の段階に分けて理解することができる。(4)発汗反応の最大の変化は、第二段階と第三段階、つまり、向暑期と暑熱期の間のある期間に起こっていると考えられる。
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