研究概要 |
◇緑地温熱環境の物理的特性:大小さまざまな草地およびその比較対象としてアスファルト・コンクリート・砂地等において,熱環境の実測を行った。地表面近傍(200cm以下)の気温垂直分布を比較したところ、日中はいずれの地表面被覆材料においても上方逓減型になった。これは上方への熱流すなわち気温上昇への寄与を示しているが、草地の表面温度は他の被覆材料よりも低い。夜間はアスファルト舗装面等では日中と同様に上方逓減型になるが、草地では下方逓減型になり気温冷却源として作用する。2つの13,000m^2前後の大規模草地における気温水平分布も測定した。草地中央で低く、周辺部で高くなる傾向が見られたが、この傾向は夜間の方が著しくなり、最大温度差は1℃を越える。現在アスファルト駐車場が都市内に広く分布していることを考えると、以上のごとき草地の気温上昇抑制効果を利用して、駐車場の路面緑化あるいは地下埋設化による地表の緑地化を図ることは都市高温化を緩和する有力な環境設計手法として推奨される。 ◇緑地温熱環境の温熱感覚による評価:樹蔭裸地と日向アスファルト鋪装面において被験者実験を行った。両空間において気温と相対湿度には差異はほとんど見られないが、全天日射量はもちろんグローブ温度・地表面温度の放射が関与する物理量には大きな違いが見られた。温冷感は全身快適感と相関が高く、暑くなるほど不快が強くなる。温冷感と相関が高い温熱指標はグローブ温度Tg・熱帯夏季蒸暑指数TSI・標準有効温度SET^*であるが、特に日向ではTgとTSIは同程度に良い相関を示す。このことからグローブ温度は簡易に測定できることもあって屋外環境を評価する温熱指標として有用であるといえる。
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