建材から放たれる揮発性有機化合物(VOC)や臭気の発生量は、建材が室内に設置された直後が最も多く、以後次第に減少していくため、米国などでは建築物竣工直後、入居前の1週間ほど通常より多量の換気を行い、汚染レベルを許容濃度以下まで低下させる居住前換気がなされている。しかし、日本においてはホルムアルデヒド(以下HCHOと称す)やVOCに対する室内許容基準はなく、また実際の住宅における実測例も少ない。そこで、本年度の研究では鹿児島市の17件の戸建て住宅においてVOC及びHCHO濃度の調査を行い、室内空気汚染の現状の確認を行った。その結果、VOC濃度はWHO(世界保健機構)の目標値を上回る実測世帯が多いことがわかった。 VOC及びHCHO濃度の測定には、ガスクロマトグラフ法、比色分析法、光イオン化法、光音響法などが用いられるが、これら異種測定法間の関係は明らかでなく、各研究者による測定結果どうしの比較を困難にしている。そこで、本研究では実測に上記の4種の測定法を用い、実測結果を比較し、各測定法間の相関を求めた。本年度の研究は居住状態の住宅における濃度実測であるため、VOC及びHCHOの発生源の特定が困難である。そこで、次年度の研究では機械換気設備をもつ300リットルの実験箱を用意し、この実験箱に各種建材、接着剤、シーリング剤を曝露し、換気量を制御することによって、濃度の経時変化を求めることを計画している。この実験によって各供試材ごとに必要な居住前換気の量・期間の算定が可能になると考えられる。
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