建材から放たれる揮発性有機化合物や臭気の発生量は建材が室内に設置された直後が最も多いため、建築物竣工直後、入居前の1週間ほど通常より多量の換気を行って、汚染レベルを低下させるという居住前換気の方法がある。本研究は居住前換気のための基礎資料を得ることを目的として、実験1ではカーペットとカーペット用接着剤を供試材として用い、実験2では壁紙と壁紙用接着剤を用いた。各実験タイプにおいて、部材は単体としてボックスに入れられるものと、両部材を重ね合わせて入れられるものがある。被験者はボックス内の空気を嗅ぎ、臭気強度と臭気許容度に関するアンケートに答えた。総揮発性有機化合物(TVOC)濃度も同時に測定した。臭気強度の平均申告値の経時変化を見ると、平均申告値が高いのはカーペットもしくは壁紙と接着剤との混合材ではなく接着剤が単独で曝露されたときであった。 化学物質濃度は活性炭チューブに箱内空気を採取してGC分析を施すことによって数回測定し、また、光音響法装置を用いて連続測定を行った。知覚空気質は16名の空気質判定パネルが空気を嗅ぐことによって知覚空気汚染単位であるdecipol値で評価した。その結果、建材曝露直後に化学物質濃度及び知覚臭気レベルが急上昇し、その後減少していく過程が見受けられたため、この結果を用いて濃度減衰モデル式を作成した。このモデル式により、居住前換気の量及び時間の最適値を算定することが可能になると思われる。また、接着剤単体から放たれる化学物質濃度は、接着剤をカーペットもしくは壁紙に貼ったものの濃度よりもはるかに高く、カーペットや壁紙が接着剤からの化学物質の発生をブロックしていることが考えられる。
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