建材から放たれるホルムアルデヒドや、揮発性有機化合物が、室内空気環境へ及ぼす影響が近年、問題となっている。これらの化学物質の濃度は、建材が室内に設置された直後が最も高く、その後、設置からの経過時間とともに減衰していく傾向がある。そこで、竣工してから1週間程度、通常よりも多量の換気を行って、入居前に空気汚染物質濃度を低下させる「居住前換気」という手法が考えられている。居住前換気として適切な換気量、換気期間を決めるためには、汚染源発生量の経時変化を知る必要があるが、そのデータは少ない。そこで、本年度の研究では、合板から放たれるホルムアルデヒドの発生量経時変化をチャンバー法実験により求めることを目的とした。 45cm×30cmサイズの市販のラワン合板を、換気回数1回/時の換気を施してある、容積0.28m^3のチャンバーに設置し、チャンバー内のホルムアルデヒド濃度を時系列に測定することにより実験を行った。ホルムアルデヒド濃度の測定は、AHMT法により、ラワン合板曝露後、96時間まで行った。また、実験条件として、チャンバー内空気温度を20℃、25℃、30℃の3パターンに設定した。その結果、ラワン合板からのホルムアルデヒドの発生は、蒸発発生が支配的な発生過程のモデル化に用いられる一次減衰モデルによる回帰が良好でなく、単なる蒸発発生によってホルムアルデヒドが発生する機構ではないことが推察された。ホルムアルデヒドの発生は、チャンバーへの曝露直後は非常に多量であるが、その後の減衰は緩やかであり、48時間後以降は、ほぼ定常的な発生が続き、これは加水分解によるホルムアルデヒドの定常発生の影響と考えられる。そこで、加水分解の発生影響を考慮した、ホルムアルデヒド発生をモデル化し、換気の効果を算定した。居住前換気は蒸発発生が支配的な、初期段階では有効と考えられる。
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