研究概要 |
3年間の研究期間の最終年度として本年度は,避難所に関して残された課題を解明するとともに,避難所の実態調査からみた避難拠点の整備水準に関する研究を行った。 (1) 昨年度までの学校や体育館等に関する調査に続いて,神戸市の区役所を対象として避難拠点としての使われ方の実態を調査した結果,区役所は避難所としての機能もかなり果たしていたこと,その際,諸室が規模,階数や用途に応じてさまざまな使われ方をされたことが明らかになった。そして,非常時における諸室の転用性を高めるためには,ゾーニングの工夫,余裕のある平面・断面計画,消防署や保健所などとの合築時の配置位置,オープンスペースの確保などが,建築計画として重要であるとの知見を得た。 (2) 避難所までの街路における避難安全性について,一地区を対象として実態調査を行い,街路上への落下物の可能性など,住宅密集地における避難時の危険性を指摘した。 (3) 地方自治体における阪神・淡路大震災を契機とした地域防災計画の見直しの実態を調査した結果,避難フローの多段階化・多系統化が進められるなど,かなりの自治体で見直しがされているものの,その程度は自治体により差が見られることがわかった。 (4) 今回の震災における神戸市の各区単位の経時的な避難者の発生・減少数データをもとにして,避難拠点への避難者数を予測する時系列モデルを求めた。その結果をもとに,大阪市における避難拠点の配置計画を検討し,阪神・淡路大震災クラスの地震が大阪市を中心として発生した場合には,現状の避難所数・収容可能人数では対応できないことを明らかにし,今後整備が必要であることを指摘した。
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