ナビケーション事態を対象として、4つの通路網タイプ-格子状・T字路・Y字路・格子○字変形-を、それぞれ環境VRシミュレーションシステム上に模した一様な迷路環境について、リアルタイム3次元ウオ-クスループログラムを作成して、初期情報としての(1)通路の視覚的特性あるいは(2)通路網タイプの空間構造に関する概念的知識、の2種類を取り挙げ、これら情報の差異によるナビゲーション行動および環境把握の傾向を比較検討するために、今年度は以下の実験を行った。 <実験1>として、前記通路網タイプそれぞれについて、初期情報の差による影響を調ベ、<実験2>として、通路幅ならびに通路壁面の色彩を変化させた部分的な条件付加モデルを用いる。 いずれの実験も、出発点から目的点へ迷わず歩行できるまで学習させた後、目的点から出発点に戻る課題とした。学習方法は、連行歩行と平面図による学習とし、課題遂行中の経路・ナビゲーション後のスケッチマップ・インタビューを記録した。 以上に基づいて、各実験モデル・各教示条件につき被験者10名によって実験を行った結果、以下の通りであった。 1)所与のモデル空間に関する把握では、把握範囲およびその正確さともに、平面教示が連行教示条件よりも高い。また、把握の様式が、前者ではイメージ的で、後者では記号的である。すなわち、少なくとも今回実験された迷路的環境においては、通路網タイプの空間構造に関する概念的知識が、通路の視覚的特性の継時的把握による知識に勝るといえる。 2)しかし、ナビゲーション開始前の初期情報によって形成される空間把握に対して、ナビゲーション途上における迷路の部分情報を付加した場合、その効果が現れている。ただし、その様相には迷路のタイプによる差が認められる。 3)格子型迷路では、平面教示の場合に迷い行動は少なく、交差の形状を円弧に変形させた格子○字変形型では、迷いが発生しやすくなっている。
|