研究概要 |
現実のナビゲーションには、通路空間の視覚的特性情報と通路網の空間的構造に関する概念的情報との両側面がかかわっており、ナビゲーションの様相をより明確にするためには、それぞれの情報の機能と両者間の相互関係を解明する必要がある。 本研究では、ナビゲーション事態を対象として、3つの通路網タイプ--格子状通路網・放射同心円状通路網・不整形通路網--をそれぞれ模した環境について、(イ)通路の視覚的特性のみが与えられた状況、(ロ)通路網タイプの空間構造に関する概念的情報のみが与えられた場合、(ハ)これら両者が与えられた場合、を取り挙げ、これら入力情報の差異によるナビゲーション行動および環境把握の傾向を比較検討し,それぞれの情報の機能と相互関係の解明を試みた。 所与のモデル空間に関する把握では、把握範囲およびその正確さともに、平向教示によって与えられた空間的構造に関する概念的情報が、連行教示条件によって与えられる通路網空間の視覚的特性情報よりも優位であり、また、把握の様式が、前者ではイメージ的で、後者では記号的であった。 本研究に先行する、現場における経路探索過程に関する実験的研究の結果に依れば、地図情報による歩行における空間把握では、地図情報が概念的図式的に把握され、歩行の反復が必ずしも空間把握の進展をもたらすとは限らない傾向が認められたのに対して、本研究で用いた人工的に作成された通路網タイプは、空間構造が概念化されやすく、その把握が容易であったと考えられる。一方、ステレオグラムシミュレーションにおける連行歩行中の視覚的環境が、現実の環境に比して単調であること、ならびにウオークスルー型の仮装歩行が実際の身体行動を伴わないことから、本研究の連行歩行における空間把握が困難であったと推定される。
|