本研究は、近い将来多量に供給されることが見込まれていながら、在来木造構法の柱材をその主用途として生産されているため、その需要がむしろ減少することが懸念されている国産の正角芯持材を多量に用いることにより、構造材としても仕上げ材としても優れた性能を持つ木材の優れた性質を活かした構法の開発を進めようとするものである。 本年度は、まず、正角芯持材を多量に用いた構法のフィージビリティーを検討するために、国内における杉材のストックの状況を、林野庁などの資料をもとに調査した。また、現在、一般的に建設されている在来軸組構法について、具体的な建設事例を対象に、使用されている木材の量を断面形状ごとに求め、正角材が使用されている割合を求めた。また、近年開発されている合理化構法に関し、正角材の使用量の割合が減少していることを明らかにし、芯持材の需要を喚起する必要があることを立証した。 次に、正角材を多量に用いた構法システムのモデルの検討を進め、本年度は4寸角の杉材を15cmピッチで並べて柱・梁をトンネル状に架構する構法の試作を行なうこととした。断面形状のスタディーを行ない、本年度は真壁の納まりとなる部分に幅6cm程度の溝をつけた断面を採用することとした。この断面を床梁・柱・天井梁に適用し、だぼを用いて桁で一体化させる8畳間大の試作モデルの設計を行ない、部材を製作し、12月に施工実験を行なった。未熟練者(学生等)8名で6時間程で建て方を完了することができ、ほぼ狙いを達成すると共に、問題点を把握することができた。また、改良設計のための資料の整備を行なった。
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