本研究は、現在の日本の国土を覆っている杉・桧といった比較的小径木の戦後の植林材を、有効に建築に用いる手法を開発しようとするものである。これらの木材は、在来木造構法の柱材をその主用途として生産されているため、その需要がむしろ減少することが懸念されている。この国産の正角芯持材を、構造材と仕上げ材を兼ねたものとして多量に用い、木材の優れた性質を活かした構法の開発を進めようとするものである。 本年度は、昨年度に引き続き、一般的に建設されている在来軸組構法と、建築家によって建設された住宅について、使用されている木材の量を断面形状ごとに求め、部位ごとの材積の傾向を把握した。特に、近年開発されている合理化構法に関しては、正角材の使用量の割合が減少していることが再確認された。 次に、昨年度に引き続き、4寸角の杉材を15cmピッチで並べて柱・梁をトンネル状に架構するモデルについて、6月に再度、組立て実験をおこなった。更に、真壁の納まりとなる部分に関して、ディテ-ルの検討を行い、数種類のタイプを設計し、8畳間大の試作モデルに対して施工実験を行なった。土壁の湿式構法では収縮等の問題が大きいこと、木材を用いた雇実方式では、挿入時の摩擦抵抗が高いこと、現場発泡のウレタンを注入する方式がかなりよい施工性と性能が期待できることなどを確認した。 また、今年度は、本構法を実際の住宅へ適用した場合を想定した、試設計を二種類の平面形式について行い、構法の妥当性を検証した。
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