我が国では、近い将来に、杉・檜などの極めて多くの木材を供給することが可能になる。しかし、それらの戦後に植林された木材は、柱としての利用を想定して育成されており、在来木造住宅の建設の減少に伴って、需要が減少することが懸念されている。本研究では、これらの国産芯持正角材を、構造材と仕上げ材とを兼ねたものとして多量に用い、木材の優れた性質を活かした構法の開発を進めようとするものである。 まず、正角芯持材を多量に用いた構法のフィージビリティーを検討するために、国内における杉材のストック状況を、林野庁などの資料を基に調査した。次に、構法システムのモデルの検討を進め、4寸角の杉材で組んだ柱・梁の加工を並べてトンネル状にした8畳間大の試作モデルの設計を行い、部材製作及び施工実験を行った。未熟練者8名で6時間程で建て方を完了することができ、ほぼ狙いを達成することができた。 また、柱材相互間の納まりを検討した結果、隙間寸法3cmの場合ではウレタン注入方式の実現性が確認された。柱相互間の隙間寸法を6cmに広げ、その間の真壁部分の構法について、数種類の開発設計を進め、実証実験を行った結果、木材のそり、変形がかなり現れるが、それを吸収する納まりが可能であることを明らかにした。 さらに、これらの実験結果を基に、住宅より多少規模の大きな建築物について、本構法を適用した試設計を行った。
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