現代の日本住居が次第に閉鎖化し、近隣関係や地域の連帯を失いつつある状況を、実態調査をもとに明らかにした。 即ち、農村部では、福井県嶺北地方の調査をもとに、伝統的住居の時代的変容を追いつつ、現代のプレハブ住宅や新興住宅地が環境との応答を絶って地域性を失いつつある実態を示した。 一方都市部では、既存の公共的集合住宅における集合の環境形成に積極的と見られる事例12団地をとりあげ、観察調査をもとに、住居の開放性と集団の共同性がいかにして可能であるかについて考察した。 また、これら事例の計画・設計の中心となった建築家・都市計画家・行政等からの談話により、住居の開放性・共同性獲得への方策について考察した。 さらに、阪神大震災の復興住宅の規格型住宅における著しい閉鎖化の弊を指摘すると共に、近隣との関係づけを意図した開放的な積極事例について評価し、とくに協同的生活を組み込んだコレクティブハウジングの事例(神戸市営及び兵庫県営住宅)については密着して調査し、その長短と問題点について考察した。 これらの調査から、住居の開放性・共同性の確保のためには、ソフトな人間関係と同時にハードな建築的つくりが重要であり、生活領域の連続性の確保、表出の場の確保、住戸の向きの重要性、接地感の確保、共用空間の適度なスケールと変化の必要性等について提案した。
|