これまで、『万葉集』をはじめとする代表的な古典文学と夏目漱石以降の近代文学作品について、都市や建築空間を表す用語を手がかりに、文学の中の建築空間を捉える研究を重ねてきており、すでにかなりの数量的データが蓄積されている。現在の研究成果から、文学の中の建築空間は実際の物理的空間のディテ-ルが省略されている代わりに文化的心情的な詳細が込められていると考えている。 本研究は、これまでの研究成果をふまえ、建築用語などの基礎的なデータに基づいて、文学の中に現れる建築空間のイメージをモデル化することを目的とし、建築用語・舞台推移に関する調査・分析を行った。 1 建築空間のイメージ復元(空間の質と構成を、データに基づきモデル化) :谷崎潤一郎・川端康成について、文献調査を行い、これまでに得られた基礎データをもとに、空間分析・イメージ復元を行った。 (1)空間分析:各文学作品について、統計的分析結果をもとに、用語と舞台の関係性を明らかにした。 (2)イメージ復元:用語と舞台の関係によるイメージモデルを作成し、各文学作品の中に現れる建築空間をモデル化した。 2 文学作品相互間の比較(建築空間の差異と推移および分類) :これまでの分析結果をもとに、文学作品相互間に現れる建築空間の差異と推移および分類を行った。 (1)建築空間の差異と推移:復元されたイメージモデルによって、各文学の作品間の差異と時代的推移を分析した。 (2)建築空間の分類:イメージモデルを用いて、各文学作品を建築空間の性質から再分類した。
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