〇ヴィラール画帖の説明文の全訳を集成し、さきに完成した画帖図柄のローマ吋格子上分類配列図集の対巻として、重要資料の態をなすに至った。 ○ヴィラール画帖内容事項に対応するウィトルウィウス建築書並びに、アルベルティ建築論の関連部分を抜粋、対照抄録して比較検討にそなえた。その結果、ヴィラール画帖が量的に大きな差があるとはいえ、あと2書に劣らない建築技術書的意義を持つものであることが明らかになった。 ○藤本がこれまで明らかにして来たヴィラール画帖のローマ吋縮尺法が、新たに大型投石機図でも検証され、ヴィラールの建築技術者的職能をいっそう確かに裏づけることとなった。 ○今回の研究成果をまとめて、日本建築学会近畿支部研究発表会、同大会学術講演にむけて投稿の準備ができたほか、本題の建築書的意義を整理し建築史学会誌に投稿、1991年藤本中央公論美術出版から公刊した「ヴィラール・ド・オヌクールの画帖研究書」への書評に答える予定が立った。 ○図書としてgesta(国際中世研究所機関誌)第1巻〜34巻(1963〜1995)計57冊を古書で入手。ヴィラール関連をはじめ多数有効論文の収集を得た。中でもS.マーレイの「フランス羊皮紙図面に見るゴシック聖堂正面図(1978)は、藤本が1990年に発表した16目方眼分析に準ずるものとして注目された。同論文参考図によりローマ吋格子図法がいっそう明らかになった。 ○R.ベッシュマン近著「ヴィラール・ド・オヌクール」は、その技術関連図版の解析を介し、大型投石機の工作とに新知見を得た。 〇別途、近年のヴィラール研究論文のひとつとして、テールノワールのものを入手、その考察から本研究まとめへのひとつの視座を強化することを得た。
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