研究概要 |
今年度は陽電子寿命測定によるNi_3Gaの原子空孔量の温度変化の測定を行い,Ni_3Gaにおける空孔形成エンタルピーを1.79eV(22.3at%Ga)から1.72eV(27.7at%Ga)と決定した.この値はNi_3Alに対して報告されている値1.73〜1.84eVに近い値である.また,Ga濃度の上昇とともに空孔形成エンタルピーの低下が見られ,これについてもNi_3Alの場合と同様な挙動であることが明らかとなった. また,Ni_3Al,Ni_3Ga,Ni_3Geの三つ化合物につきそれぞれの単相拡散対を用いて相互拡散係数を測定した.これまでに明らかになった特に顕著な傾向はどの化合物においてもminor elmentの濃度上昇に伴い相互拡散係数が上昇を示すことである.Ni_3Ga,Ni_3Geについては放射性同位元素を用いてそれぞれの構成元素の自己拡散係数も測定し,Ni_3GaにおいてはNi原子がGa原子よりも2-4倍ほど速く拡散し.Ni_3GeにおいてはNi原子の拡散はGe原子よりも数十倍から100倍ほど速いことが明らかとなった.また,我々は理論計算によりNi_3Al中でNi空孔の生成がAl空孔よりも容易であるという知見を得,これらの化合物中での構成原子の長距離拡散はおもにNi副格子中の空孔のジャンプによるというモデルを提示し,これまでの実験データにこの観点から理論的検討を加えている.
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