研究概要 |
Ll_2型規則格子構造をとるニッケル基の金属間化合物について,点欠陥に関する計算機実験および拡散係数の測定を行い,その結果に基づいて拡散機構を考察した. 1.埋め込み原子法(Embedded Atom Method)を用いて,Ni_3Al中の固有点欠陥の静的・動的性質を原子レベルシミュレーションにより調べた.まず空孔形成エネルギーなどの信頼性の高い最近の実験値をよく再現するように従来のポテンシャルを改良し,それを用いて,拡散機構の議論に必要となる種々の点欠陥の形成エネルギーと格子歪,移動の活性化エネルギー,空孔とantisite atomの結合エネルギー等を求めた. 2.Ni_3GaおよびNi_3Geについて,Ll_2相単相の拡散対を用いて相互拡散(科学拡散)係数を種々の温度で測定した.この実験から化学拡散係数が組成の連続関数として得られ,拡散係数が化合物A_3Bの成分Bの濃度に正に依存することが明らかになった. 3.化学拡散における熱力学因子を,規則格子合金のペア相互作用熱力学モデルに基づいて定式化した.これをNi_3Alの活量データに適用し,そこから導かれた熱力学的因子の値を用いて,これまで信頼できる実験データがなかったNi_3Al中のAlのトレーサー拡散係数の大きさを評価した.1400Kにおいて,Alの拡散係数はNiの拡散係数の約1/3である. 4.実験により明らかになったNi_3Al,Ni_3Ga,Ni_3Geにおける拡散挙動を点欠陥の性質と合わせて定量的に考察し,A,B両原子種とも長距離拡散はA原子の副格子上で空孔機構によりおこるというモデルを提案した.このモデルによる構成元素のトレーサー拡散係数の大きさ,化学拡散係数の大きさ,およびそれらの組成依存性が説明できる.
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