従来の薄膜法では定量解析が不可能であった基板上に成長させた0.1μm厚さ以下の非晶質膜を定量構造解析を行うために、全反射X線回折法による方法を考案した。この方法を、SiH_4、N_2O、HeガスにN_2ガスを含む雰囲気と含まない雰囲気中でそれぞれプラズマCVD法により製膜した200nm厚さのSiO_<2-x>非晶質薄膜の定量構造解析に適用した。窒素ガスを含む雰囲気中で製膜したSiO_<2-x>非晶質薄膜では、SiO_44面体を基本構造単位として、4面体の頂点の酸素原子を共有し隣接する4面体と連結し、バルクのSiO_2ガラスで報告されているネットワーク構造と同様の構造であることが分かった。一方、窒素ガスを含まない雰囲気中で製膜したSiO_<2-x>非晶質薄膜では、基本的なネットワーク構造は窒素ガスを含む雰囲気中で製膜したSiO_<2-x>非晶質薄膜と同様であるが、Si-O最近接原子間距離が数%長く、Siの周りの酸素原子の数は約1割程度少なくなる。また最近接における酸素原子の周りの酸素原子の配位数も一割程度少なくなる。このことから、窒素ガスを含まない雰囲気中で製膜されたSiO_<2-x>非晶質薄膜では、窒素ガスを含む雰囲気中で製膜されたSiO_<2-x>非晶質薄膜と異なり、SiO_44面体を基本構造単位としてできあがったネットワーク構造中の酸素原子が欠損していることが予想される。このような酸素原子が欠損したネットワークの構造が、窒素ガスを含まない雰囲気中で製膜されたSiO_<2-x>非晶質薄膜で絶縁性が劣化する原因であると考えられる。この基板上に製膜したSiO_<2-x>非晶質薄膜の定量構造解析の結果から、X線全反射法によりサブミクロン以下の厚さの非晶質薄膜の定量構造解析が可能であることが明らかになった。
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