従来の薄膜法では不可能であった基板上に成長させたサブミクロン以下の厚さの非晶質薄膜の定量構造解析を、X線全反射現象を利用した方法により可能にした。この方法を、SiH_4、N_2O、He、N_2ガスを含む雰囲気中でプラズマCVD法により製膜した200nm厚さのSiO_2非晶質膜や反応性スパッタリング法によってガラス基板上に成長させた70nm厚さのSi_3N_4非晶質薄膜に適用して観測されたX線回折強度を定量解析することにより、これら非晶質薄膜のネットワーク構造を実験的に決定した。SiO_2非晶質膜では、基本構造単位は、SiO_4四面体を基本構造単位とし、四面体頂点の各酸素原子を介して隣接する四面体が連結したバルク状SiO_2非晶質の場合と同じネットワーク構造が観測された。また、Si_3N_4非晶質薄膜では、SiN_4四面体を基本構造単位とし、頂点の各窒素を介して2つの四面体が連結したネットワーク構造が観測された。ただし非晶質薄膜では、Si-Si原子間距離に、結晶では見られない非常に近い距離の相関が存在することが分かった。非晶質でのN-N配位数の減少などを考慮すると、これはN原子位置の一部が空孔になっていることによることが予想された。すなわち、2本の結合手を持つ酸素に比べ、3本の結合手を持つ窒素では空間的自由度が少なく、SiO_2に比べ非晶質になり難いSi_3N_4で、非晶質構造を形成するのは、このような窒素原子空孔が存在するためであると考えられた。
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