研究概要 |
磁性金属人工格子の磁気特性は磁性層の界面構造と密接な関係があると考えられ、磁気的性質のメカニズムを明らかにし、特性の向上を図る上で、人工格子の界面補造を詳細に調べることが非常に重要となる。本研究では、MBE法により作製した、遷移金属-貴金属系2元系人工格子[TM/NM][TM/TM](TM=Fe,Co,Ni,Cu,NM=Au,Ag)について、NM層上に成長する様々なTM層の界面構造、成長様式などをRHEEDの連続観察を通して系統的な評価を行い、磁気特性を調べ、両者の関連について考察した。 (a)(TM=Fe):Fe/Au系,Fe/Ag系ともにFeはbcc-Fe(110)配向で、3つのドメインを形成した。(b)(TM=Co,Ni):TM/Au系ではTMの格子間隔は積層とともに連続的に減少し、バルク値に漸近したのに対して、TM/Ag系では不速続的にバルク値に変化した。AuとAgの原子半径は、ほぼ同じであり、CoおよびNiに対して約13%の格子のミスマッチが存在する。従って、TM/Au系ではTM層は界面付近で大きく歪み、TM層の積層とともに歪みが緩やかに開放されたのに対して、TM/Ag系においては、TM層内に歪みは生じずに界面付近にミスフィット転位が集中した結果、前述の様な格子間隔変化を示したと考えられる。(c)(TM=Cu) :Cu/Au系ではCuの格子間隔は積層とともに連続的に変化したのに対して、Cu/Ag系ではCu層の格子間隔は不連続的に変化した。Cu/Au系は全率固溶型であるために界面に混合層が形成され、混合層の組成の変化によって格子間隔が連銃的に変化したと考えられる。他方、Cu/Ag系は2相分離型であるため、混合層が形成されず、不連続的な変化を示したと考えられる。(d)Co/Cu:バルクのCoは室温でhcp構造をとるが、Cu上にエピタクシアル成長させたCoは、非平衡なfcc構造をとることがわかった。
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