研究概要 |
形状記憶Ti-40.5Ni-10Cu合金のB2→B19→B19'二段階変態に及ぼす873kでの時効の影響について電子顕微鏡観察定荷重熱サイクル試験,および通常の引張試験により調べた。得られた結果は以下の通りである。 時効時間の増加にともないB2→B19変態開始温度およびB19→B19'変態開始温度はともに上昇し、逆変態開始温度も上昇する。また、二段階変態の起きる温度範囲は時効時間の増加にともない減少する。時効したTi-40・5Ni-10Cu合金はB2型構造のマトリックス(ac=0.3029nm)とC11b型構造の析出物(at=0.3132nm,at=0.7991nm)より構成されている。析出物はマトリックスと部分的に整合であり、板状の形態をしている。マトリックスと析出物の方位関係は[100]c//[100]t,[001]c//[001]tであり、晶癖面は{001}cである。変態温度の上昇は時効析出によって起こる。析出により、マトリックスのTi濃度は上昇し、変態開始温度は上昇する。また、析出物の周りの歪場はB19マルテンサイトの生成に有利に働くため、析出物はB19マルテンサイトの核生成サイトの役割をする。B2-B19変態にともなう形状変化は,充分時効した試料においては溶体化処理直後の試料に比べ狭い温度範囲で起こる。時効時間の増加にともない,熱誘起B2-B19変態に伴う一定荷重下での伸びは減少し,通常の引張試験における0.5%オフセット応力は増加する。機械的性質に及ぼすこれらの時効効果はC11b型の析出物により引き起こされる。時効の際に生成した析出物は,B19型マルテンサイトのバリアントの再配列の障害となる。
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