Sm_<1+x>Ba_<2-x>CuO_<7-d>(Sm-123)超伝導体を、固相反応法によって0.1%O_2-Ar雰囲気中で作製した。その後バルク試料を様々な温度で酸素中で焼鈍することによって超伝導体化させたところ、x=0.00の化学量論組成の試料の臨界温度は95Kであった。一方、この試料を粉砕した後、同様に酸素中で焼鈍したところ、臨界温度は95Kと変わらないものの、試料表面近傍で試料が分解し、BaCuO_2が生成していることが透過型電子顕微鏡観察ならびにエネルギー分散型X線分析装置による元素分析の結果から判明した。このことから、0.1%O_2-Ar雰囲気中で生成した、Smが若干不足したSm-123が、酸素中では安定でないことが推察された。このため、試料表面で分解してBaCuO_2が生成するものと考えられた。これらの試料の臨界電流密度を測定したところ、1〜2T近傍で極大値を示すピーク効果が現れていた。これまでピーク効果が現れるSm-123は、xが正のSm過剰の組成を持つ試料であった。こうしたことから、今回x=0.00の化学量論組成のSm-123に、弱いながらもはっきりしたピーク効果が見られたことにより、バルク試料でも表面や粒界でBaCuO_2の分解が起こっており、粒の内部ではSm過剰な組成になることにより、ピーク効果を引き起こす磁束ピン止め中心が生成しているものと考えられた。
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