光機能性を有する新規な先端無機材料の設計および開発はこれからのフォトニクス時代に向けて重要かつ緊急の研究課題である。本研究は、申請者の発見した透明なテルライト系ガラスセラミックスにおける第二高調波の発生(SHG)機構を解明すると共に、希土類イオンを添加した透明なガラスセラミックスの創製およびファイバー化の観点からテルライト系ガラスのガラス転移域での構造緩和挙動を明らかにすることを目的とした。 本研究で得られた成果は次の通りである。1)SHGの強度は、2段階熱処理した後に両面を研磨して得られた試料と表面をあらかじめ研磨した後に熱処理して得られた試料の場合では、大きく異なる。特に、メーカーフリンジ法でSHGの強度を測定すると、後者の方が前者の場合に比べてかなり大きい。また、後者の場合には明瞭なフリンジパターンも観測されることから、表面近傍における結晶相の配向や結晶自体に内部とはかなり異なる状態が出現していることが明らかになった。2)15K2O-15Nb2O5-70TeO2ガラスにEr^<3+>を添加した系では、Er2O3を1.5mol%まで添加しても透明ガラスセラミックスが得られることが明らかになった。この透明なガラスセラミックスに800nmのレーザー光を照射すると、550nm付近に^4S_<3/2>→^4I_<15/2>への遷移に帰属できるアップコンバージョンが明瞭に観測された。3)各種テルライト系ガラスの構造緩和を粘性流動の活性化エネルギーや比熱測定から評価した結果、TeO2系ガラスはSiO2系ガラスなどとは異なり、ガラス転移域においてイオン間や網目構造単位間の再配列が極めて容易に起こることが明らかになった。フラジリティの概念をより明確にするために動力学的フラジタティと熱力学的フラジリティを区別する必要のあることを提案した。
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