メタノールおよびヒドラジンを利用した液体燃料電池の負極として多孔質Raneyニッケル触媒を適用した。Raneyニッケル電極は、多孔質ニッケル板にアルミニウムを溶射した基板から作製した。このアルミニウムを溶射したニッケル板を550〜750℃で処理して合金を作製し、続いてアルカリ溶液でその合金を処理してアルミニウム分を溶出させることにより多孔質ニッケル電極を活性化させた。こうして作製したRaneyニッケル電極は熱伝導、電気伝導ともに優れており、それ自身電極としての使用に耐えうる強度も持っていた。メタノール燃料電池、ヒドラジン燃料電池とも、電極の特性(分極抵抗)は合金化するときの処理温度が高いほど向上した。これは、SEM観察、BET表面積測定から活性化したニッケル粒子が増えることに起因することがわかった。X線回折測定において回折ピークが幅広く、結晶にたくさんの乱れがあることが示唆され、これはBET表面積の増加と関係づけられた。XPS測定により電極中のアルミニウムとニッケルの分布状態を調べた結果、金属ニッケル以外に電極の表面から200Å迄のところにNi_2O_3あるいはNi(OH)_2の存在が確認されたが、アルミニウムも表面から1200Åにわたってほぼ一様にAl_2O_3あるいはAl(OH)_3として分布していることがわかった。Raney触媒のNiK吸収端XANESスペクトルの形状はニッケル金属のそれとほとんど変わらないが、RaneyニッケルのEXAFSスペクトルの振動構造は急激に減衰し、解析の結果、ニッケル周りの配位数は通常のニッケル金属の12と比べ6程度に減少していることがわかった。このことは、Raneyニッケル中の残りの6つのニッケル原子は通常の位置から移動していることを示しており、X線回折の結果とも併せて、多量の欠陥が活性化したニッケル中に生成していることが考えられた。
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