研究概要 |
[目的]C_<60>分子は極めて高い体積弾性率を持つと考えられており,また,結晶となった場合は分子同士が弱いファンデルワールス力で結合しているため,グラファイト並の潤滑能を示す固体潤滑剤として働くことが期待されている.そこで本研究では,代表的なトライボセラミックスであるジルコニアにC_<60>を添加した耐磨耗複合セラミックスを作ることを目的とする. [実験方法]複合粉末は,ヘリウムガス中でのグラファイト棒のアーク放電により得たC_<60>とジルコニウムノルマルプロポキシド(ZNP)を溶液として混合し,以下に示すように,その乾操,焼成によって得た.(a)ZNPのトルエン溶液にC_<60>粉末を溶解させ,110℃真空中で溶媒除去後,大気中で500℃30分間熱処理を施し,C_<60>含有ジルコニア粉末を得た.(b)別々に作製したジエタノールアミン(DEA)添加ZNPのトルエン溶液とC_<60>のトルエン溶液を混合後,沈殿を生じさせ,(a)と同様の熱処理を行った.(a),(b)の方法により作製した粉末をフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)と透過電顕(TEM)で解析した. [実験結果](a)の粉末試料では,IRスペクトルにC_<60>のピークが認められ,かつ,TEMによりジルコニア組織中にC_<60>が結晶化している様子が示された.(b)の粉末試料ではC_<60>の存在が確認されなかった.そこで,DEAとC_<60>を混合したもの,および,C_<60>のみを上記のごとく熱処理して比較したところ,前者においてのみ赤外スペクトルとTEMによってC_<60>の存在が確認されず,DEAはC_<60>の分解を促進することが判明した.(a)法によって得た複合粉末を900℃以下の温度でカプセル内に充填して焼結することによりバルク体を作製し,そのビッカース硬さを測定したところ,ZrO_2-3mol%C_<60>で,低温焼結にも関わらず最高で400近い良好な値を得た.また,電気抵抗率が焼結温度の上昇とともに大きく低下し,導電性セラミックスとなることがわかった.
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