研究概要 |
α_2Ti_3Al相とγTiAl相からなる二相チタンアルミナイドは,次世代の高温材料として注目されている.この材料をより高性能化するには,その組織を最適に設計する方法論を確立する必要がある.本研究では.その基礎として,チタンアルミナイドの組織と高温強度の関係を検討してきた.本年度は.完全ラメラ組織TiAl合金の構成単位に相当するPST単結晶TiAl合金を使って研究を行い.以下の結果を得た. 1. PST結晶のクリープ強度は,引張り軸とラメラ界面とのなす角に強く依存する.引張り軸とラメラ界面が平行あるいは垂直に近いと,PST結晶のクリープ速度は非常に遅く,多結晶TiAl合金より高い変形抵抗を示す.一方,中間の角度では,多結晶体と同程度のクリープ速度となる.これは.後者では相界面に平行なバーガースベクトルを持つ転位による変形が支配的になり,変形の障害としての相界面の役割が十分に発揮されないためである. 2. 1の結果は,集合組織制御で多結晶TiAl合金の高温クリープ強度を向上できることを示唆する.すなわち,ラメラ変態前のα相の[0001]を応力軸に平行あるいは垂直とし,その後のラメラ組織の方向を揃えれば.クリープ強度を大幅に向上できる. 3. PST結晶は必ずしも平衡組成に達していないため,薄いα_2相の溶解と厚いα_2相内でのγ相の析出が起きる.後者は厚いα_2相を微細ラメラ化する.同時にγ相内では.双晶変形で相界面に平行な双晶境界が導入され,γ相も微細ラメラ化する.これらの変形中の微細ラメラ化は,クリープ強度を向上させる. 4. 粒界近傍での不連続粗大化や動的再結晶発生のために,多結晶TiAl合金のクリープでは,ラメラ組織は安定ではない.結晶粒界を含まないPST結晶では,結晶粒界がないためにこれらの組織不安定性が起きず,その分だけ高温クリープ強度が向上する.しかし,ある程度塑性ひずみが蓄積されると,すべり帯が形成され,その部分での動的再結晶で材料が弱化する.PST結晶の高温強度を更に向上するには,すべり帯の発生と動的再結晶を抑制する必要がある.
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