研究概要 |
FeとAuの単原子層積層制御により人工的に作製したL1_0型FeAu規則合金が示す物性の特異性をより明らかにするために、Fe(n_<Fe>ML)/Au(n_<Au>ML)人工格子(n_<Fe>,n_<Au>=1,2,3,・・・、MLは原子層の意)を作製し、FeAu規則合金(n_<Fe>=n_<Au>=1)の場合との比較・検討を行った。Fe(n_<Fe>ML)/Au(n_<Au>ML)人工格子の1磁性層単位面積当たりの垂直磁気異方性K_□は、n_<Au>には依存しないが、n_<Fe>の増加とともに直線的に減少する。K_□のn_<Fe>依存性を解析し、界面磁気異方性エネルギーK_Sを求めると、K_Sはn_<Fe>≦3では,n_<Fe>の増加とともに増大するが、n_<Fe>≧4では一定となる。この結果は、拡張されたネ-ルモデルにより理解されることがわかった。Fe(n_<Fe>ML)/Au(n_<Au>ML)人工格子の磁気カ-スペクトルは、n_<Fe>,n_<Au>≧6ではバルクAuの伝導電子のプラズマ共鳴に基づく増大効果が見られるが、n_<Fe>,n_<Au>≦5では増大効果は観測されず、Auの伝導電子の状態がバルクとはかなり異なったものになっていることが示唆される。また1≦n_<Fe>,n_<Au>≦8で3〜4eVに特徴的な構造が見られ、これはFe層の3d電子の量子井戸状態に関係するものであることが示唆された。人工的な積層構造と物性との関係をさらに深く調べるために、n_<Fe>,n_<Au>を1.5などの非整数にした場合の研究も行った。非整数にした場合でも、X線回折により非整合周期に伴うシャープな超格子線が観測され、layer-by-layerの成長が確認された。また、大変興味深いことには、非整数の場合の垂直磁気異方性は整数の場合の内挿線上になく、整数原子層の場合と非整数原子層の場合で、人工格子の物性に明らかな違いがあることが示された。今後は、この原因を追求すると同時に、物質系をCrAuなどの他の系に拡張して研究を進めていく予定である。
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