本研究ではNi-Al-Mo系において高融点金属であるMoが、NiAl(β)相の相分解やNi_3Al(γ′)相からの析出、共晶反応等によって現れると推測される領域があることに着目し、凝固過程を利用したγ′相中にMo(α)相の微細分散を図り高融点・高延性・低比重の、実用Ni基超合金に対して十分競合できる合金を設計することを目的として3元系状態図を調べると共にγ′/α2相合金の相安定性と機械的性質に関する研究を行った。 本年度は相安定性の評価を主として行い、熱処理前後の試料において組織観察及びDTAにより、組織の形成過程と状態図の縦断面図の推測を行った。目標とした組成領域での熱処理前後の組織ではγ′/α2相となっていたが、γ′相にはα相の微細析出物を内在する相と析出物フリーの相の2種類が存在した。析出物フリーのγ′相は凝固過程における相分解によってβ相からAlが液相に拡散しγ′相に変わることで形成される。このことから、相分解反応では期待された組織の微細化が起こらないことが確認された。しかし、不変系反応温度近辺で形成されたと考えられるα相の析出物は、1200℃で24時間の熱処理においても、長さが1μm程度にしか粗大化せず、微細な形状を保っていた。 次年度はこのような組織を有する多相合金の機械的性質を評価することに主眼を置き、高温強度と室温延性を兼ね備えた耐熱合金の設計のために組織を最適化する手法を探索する。
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