研究概要 |
本研究課題に関し平成9年度の実施した研究は金属・合金の相分解及び表面処理皮膜と基板の界面の構造解析に大別でき、その概要を以下に示す. (1)金属・合金の相分解に関する研究 鋼の中間段階組織は一般に炭化物析出を伴なうので母相のオーステナイトとフェライトの間の結晶学的特性のみを取り上げて研究することが比較的困難である。そこでセメンタイト析出が著しく遅延する高シリコン鋼のベイナイトを透過電子顕微鏡観察を主に用いて検討した。その結果,フェライト粒内に格子不変歪を構成すると思われる変態転位の配列が見とめられ,ベイナイト変態機構解明の一つの手がかりを得た。更に、ベイナイトの生成機構に関する結晶学的な理論の構築を試み,γ/α界面における個々の原子の独立ではあるが原子位置対応を移動に伴う格子変化,それに伴なう弾性の格子不変歪による緩和および形状変形の母相中での緩和のし易さを考慮すると現象を矛盾無く説明できることを示した。 また,準安定β-Ti合金において同様に中間段階変態的な挙動を示すβ→α変態に及ぼすω相生成の影響を結晶学的な特性を検討した。その結果,ω相はα相の核生成位置となり,ω相析出を先行させるとα相が著しく微細化することと結晶学的な挙動が上述の変態モデルで都合よく説明できることを示した。 (2)表面処理皮膜/基板界面の構造 Zn/Fe、Zn/Ni合金電気鍍金の皮膜形成及び皮膜/基板界面の構造について検討し、皮膜の構成相や皮膜形態の支配因子を検討し結晶学的なモデルを構築した。
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