研究概要 |
「金属人工格子」も異種の金属を原子層単位で制御して交互に積層した人工的多層膜であり,平衡状態では存在し得ない新物質である。通常分子線エピタキシ-・スパッタリング等の物理気相成長法により作製され,新機能材料の創製・新物質探索を目指して研究開発が世界的にも急速に進展している。特に,磁性体分野においては垂直磁気異方性や巨大磁気抵抗効果等応用に結び付く新しい現象が見いだされ最近の大きな話題になっている。 本研究は,常温常圧で行える液相からの金属相形成法である「電析」における原子層単位の構造制御と金属人工格子作製に関して検討したものであり,電析による磁性人工格子・多層膜の作製,特に,その垂直磁気異方性や巨大磁気抵抗効果の発現機構と構造に関する原子層単位の解析と制御を主要な研究目標にした。反射電子顕微鏡観察による解析を基に,電析Co,Pt,Cu/Pt(111)超簿膜・2層膜の結晶成長機構に関して検討し,積層構造制御の基礎データを得た。電位制御条件下(室温)においてCo/Pt,Co/Cu多層膜を作製し,断面透過電子顕微鏡観察,X線回析,エネルギー分散型X線分析ならびにオージェ電子分光法により組成変調・積層周期構造を評価した。作製された多層膜は厳密には組成変調合金膜ではあるが,人工周期構造がほぼ全体に均一に存在し,その構造は電析条件,特に電位に依存した。また,その磁化は面内磁気異方性を示すものの磁気特性は積層構造に依存し,Co/Cu(111)fccテクスチェア多層ナノ構造においては巨大磁気抵抗効果ならびに反強磁性層間結合の振動性,更に,Co-Cuナノグラニュラー合金薄膜においては室温で20%以上の巨大磁気抵抗値が観察された。人工格子の高品質化を目指し検討すべきまだ多くの課題が残されているが,電析条件を厳密に制御することにより従来の気相成長法に劣らないあるいはむしろより特異な構造・機能を有した新物質に成り得るものであると考えされる。
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