本研究の目的は、X線ラウエ斑点とトポグラフ、即ち結晶構造と組織の両方の高速観測システムを確立し、それに基づき動的再結晶発現の真否を検証することである。平成8年度は純Alの動的再結晶の発現の真否を単結晶の圧縮変形を中心に調査した。主な結果は次の通りである。 (1)試験温度:400K〜500K、歪速度:10^<-2>s^<-1>〜10^<-5>s^<-1>、において動的再結晶の発現によると考えられる著しい応力変動が観察される。変動は高歪域において次第に収束する。 (2)圧縮軸を〈111〉、〈110〉、〈100〉の3通りに選定して応力-歪曲線を測定した結果最初の応力ピークが現れる臨界歪は〈111〉において最も小さい。〈100〉方位では最も大きい。 (3)本試験条件内では、低温、高歪速度において単一ピーク型の応力-歪曲線が得られる傾向が強い。 (4)一定試験温度においては一定歪速度で第一ピーク出現の臨界歪が最小となる。これより低歪速度あるいは高歪速度では、臨界歪は大きくなる。 (5)第一ピークの出現に至るまでの塑性変形は主として主すべり系転位の活動によって進行することがすべり線観察によって確認された。 (6)異なる試験温度、歪速度での第一ピーク応力値から動的再結晶発現のみかけの活性化エネルギーを推定した結果、約65kJ/molであった。この値は純Al中の大傾角粒界移動の活性化エネルギーとして報告されている値に近い。
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