研究概要 |
1.高温溶融塩用ひずみ電極装置の試作 高温用のひずみ電極の場合,るつぼ底部に穴をあけ電極を通したときの電極/るつぼ界面のシールドが当初から大きな問題であったが,アルミナセメントを用いることによりほぼ解決できた.まず,電極としてSUS304ステンレス鋼,溶融塩として融点が低く,化学的に安定な硝酸塩(等モルNaNO_3-KNO_3)を用い,温度400℃で試作した高温溶融塩用ひずみ電極の予備試験を行った.その結果,るつぼ底部のアルミナセメントによるシールド部からの溶融塩の洩れもそれほど激しくなく,計測可能であることが確認された. 2.硝酸塩でのSUS304ステンレス鋼ひずみ電極での測定結果 定電位にアノード分極し,ひずみ速度10mm/minで変形させながら電流の変化を計測したところ,変形に起因した電流変化挙動は3つの領域に分類された.第1領域は弾性変形領域で,電流の増加はわずかであり,これは不働態皮膜の厚さの変化による電流変化と考えられる.第2領域は,塑性変形領域で,すべり変形による新生面が表面にあらわれるため急激な電流増加が観察される.第3領域は破壊直前で割の進行が始まり,これにともなう新生面ができるため,最も大きな電流増加が観察される.また,溶融硝酸塩に10mol%の塩化物イオンを添加することにより,変形による電流変化は,溶融硝酸塩だけのときに比べて数倍大きくなり,塩化物イオンにより新生面の再不働態化が遅れることがわかった. 以上述べたように,現在のところ,高温溶融塩用ひずみ電極システムはほぼ確立し,今後,さらに高温腐食が問題となる,溶融塩化物あるいは溶融硫酸塩系へ適用する予定である.
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