研究概要 |
鉄鋼材料の結晶粒超微細化処理に対して,動的再結晶と動的相変態を併用する新たな加工熱処理法の開発とその基本原理を解明することを目的として,動的再結晶組織からの拡散変態特性と加工中に生じる動的相変態特性を,超高純度IF鋼とフェライト系ステンレスCr鋼を用いて調査し,次の諸結果を得た。1,2は前者,3,4,5は後者より得た結果である。 1.動的再結晶γ粒組織を焼きなますと多段階からなる軟化課程を示し,長時間焼きなまし後でも完全軟化状態には至らない。これに対応して拡散相変態によって生じるα粒組織における粒径も不完全軟化域ではほとんど増加せず,微細粒のままである。 2.動的再結晶γ粒組織中の高密度転位線上に優先的に微細炭窒化物が析出し,それが転位下部組織を安定化する結果,γ粒組織は長時間の高温保持によっても粗粒化が抑制され,引き続きγ-α相変態で生じるα粒径の増加も抑制される。 3.Fe-Cr鋼のγ-α域でのσ-ε曲線は,鋭いピーク応力に達した後,顕著な加工軟化を生じながらある一定応力に近づく。この加工軟化はγ粒組織が変形に伴いα粒へ変態する動的相変態によって引き起こされる。しかし,同じ温度で静的に長時間保持してもγ-α変態は進行しない。 4.動的相変態によって生じる平均α粒径は,ひずみ速度の増加に伴い微細化すると共に高温下では更に微細化する。
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