Fe-17%Crを基本成分とし、酸化物種として、イットリア(Y_2O_3)、チタニア(TIO_2)、アルミナ(AL_2O_3)をそれぞれ、独立に0.25mss%添加した合金をメカニカルアロイング法により3種作成した。酸化物粒子のサイズ、分散状態は透過型電顕により観察した。また、それらの合金強度、延性に及ぼす影響を室温〜1173Kの温度範囲にて引張試験により調べた。 イットリア粒子は3種の酸化物粒子の中で、最も経が小さく且つサイズ分布の広がりは小さく、また、マトリックス中に均一に分散した。一方、チタニア、アルミナ粒子はイットリアに比べ、経が大きく、且つマトリックス中に疎に分布していた。 引張試験によって得られた強度及び延性には、それぞれの酸化物粒子のサイズおよび分散状態に対応した特徴が認められた。即ち、イットリア分散合金が最も強度が大きく、チタニア、アルミナを含む合金の強度はより低くなった。ただし、低温側の引張試験ではチタニアを含む合金がアルミナ分散合金より更に低くなり、分散状態との対応をより定量的明らかにする必要があると考えられる。 延性は強度の大きいイットリア分散合金が一般的に低くなる傾向が見られたが、試験温度によってはイットリア分散合金が他の合金より延性が大きくなる場合もあった。 従って、強度・延性は粒子のサイズおよび分散状態のみで決められるのではないことが暗示された。また、酸化物種の違いによるサイズ分布、マトリックスへの分散状態の違いの起こる原因についても今後、粒子とマトリックスとの濡れ性、また、酸化物形成エネルギーの観点から明らかにする必要があると考えられる。
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