研究概要 |
本研究は,加工現象を物理的に正しく表現する偏微分方程式ベースの数値計算シミュレータと加工部から計測したモニタリングデータを組み合わせたモデル規範型のセンシングシステム構築を目的としたもので,シミュレータからの出力とターゲットとなる実加工部からの出力(モニタリングデータ)との誤差を最小化するよう数値計算(仮想加工部)のパラメータを調節,直接観察が困難か不可能な加工現象の進行状況と加工結果(品質)を間接的に観測するようにしている。そして,これを抵抗スポット溶接部の品質保証技術に応用し,更なる溶接品質の安定化と「散り」と呼ばれる溶融金属スパッタのないクリーンな環境確保の両立を図るとともに,これらを一元管理するためのイントラネットの活用技術の導入も計画している. 初年度となる平成8年度は,このモデル規範形モニタリングシステム実用化のためにまず必要となる,大型計算機用に開発された数値計算コードのコンパクト化を進め,ワークステーション上やマイクロコンピュータ上で動作するよう移植・改良した。そしてこの計算ソフトを利用したモニタリングシステムの汎用性吟味を行ない,結果として,亜鉛めっき鋼板以外にアルミニウム合金板の抵抗スポット溶接部への適用が可能なことを明らかにした.このアルミニウム合金についての研究成果は平成8年度の国際溶接学会年次大会で報告され,好評を博した.また,0.1秒というごく短期間にこの数値計算を終了させ,リアルタイムに溶接品質を判定するための単純化モデルの開発と計算アルゴリズムの改良を行なうとともに,このモニタリング手法適用可能範囲確認のための抵抗溶接機の設計・製作を行った.
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