研究概要 |
微生物腐食と推定された事例の解析を行うと共にその施設に残留していた液体を入手したので、それを用いて研究室レベルでの再現実験を実施し、腐食の再現と微生物を特定することを目的とした。さらに、腐食機構、および微生物のもつ腐食性の評価を行なった。得られた主なる結果は次の通りである。 (1)事例解析のために採取した排水を用いて、事例に近い条件を模擬した研究室の実験でステンレス鋼の微生物腐食を再現させることが可能であることを明らかにした。 (2)再現実験によって微小腐食孔とその周辺に付着した微生物を同時に観察した。さらに煮沸滅菌した事例水を用いると腐食が発生しなかったことから、微生物の関与が確認された。 (3)排水中からグラム陰性菌およびグラム陽性菌が合計7種分離・特定された。これらの菌類は住環境の水廻りにも存在するものであることが分かった。 (4)分離培養した菌を用いてそれぞれの菌のもつ腐食性を調べた。本実験条件では菌のもつ腐食性はMethylobacterium sp.およびArthrobacter sp.が最も強く、次いでBacillus sp.,Sphingomonas sp.,Aurebacterium sp.の順であった。Terrabacter sp.およびNocardioides sp.には腐食性は認められなかった。 (5)本実験における微生物腐食の要因の一つとして、これらの微生物が有機酸を生産し、その濃度が微生物が付着した場所で局部的に高くなり腐食を発生させたものと推定した。 (6)用いた数種のステンレス鋼に対して、微生物腐食が観察された。しかし鋼種間での耐腐食性の有意な差は認められなかった。
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