研究概要 |
各種粉末材料にメカミカルアロイング処理(以下MA処理と略記する)を施すことにより、非平衡状態がえられ、新しい合金相や、新しい物性が発見されている。MA処理により得られる試料は通常,粉体状なし薄膜状のものである。粉体状の試料からそのMA特性を保持させて、高密度のバルク材を作製するためには、本質的に冷間で圧縮がなされている衝撃固化法が最適な加工プロセスの一つである。この方法は粉末表面部のμmオーダーの極薄い層の溶融・超急冷により、粉末を圧縮固化するもので、粉末内部は固化前の非平衡状態が保持できる。さらに、超高圧により物理的に圧縮固化するため、広範囲の材料に適用することができる。本研究者らはこれまで水を圧力媒体とする円筒衝撃圧縮法を開発し、各種粉体材料を用い、割れ等の欠陥のない良好な圧縮体を作製している。 本研究ではSUA304L鋼粉末をMA処理により、マルテンサイトに加工誘起変態させ、さらに多量の格子欠陥を導入し、えられた圧延粉末を水中衝撃波固化法により、強加工状態を保持したまま圧縮固化し、その後の熱処理により、オーステナイトへの逆変態により、結晶粒微細化を行うものである。 原料粉末として、SUS304L(18.31wt%Cr-10.94wt%,平均粒径44μm)を使用した。MA処理は加圧型MA装置を用いて、種々の条件下で加工した。その結果、圧縮強度1080MPa,硬度510Hvを示した。その時の組織は(α+δ)2相混合組織を示し、平均粒径は90nmであり、本方法は結晶粒微細化に有効な方法であることが知られた。
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