研究概要 |
平成9年度では小型コニカル型センサーの完成を目指し、最終的には直径25mmと15mmのセンサーを作成した。このセンサーは、現在市場にある耐熱センサー(直径約150mm)に比べて約1/7から1/10であること、冷却を必要としないこと、取り扱いが通常のセンサーと同じであること、密封型であるため他のセンサーへノイズを与えないことから、マルチチャンネルで使用することができる。このため、音源の位置評定、縦波放射パターンによるモーメントテンサー解析、面外変位の逆解析による破壊速度など、材料破壊について必要な情報をすべて得うることを可能にした。この意味において当初の目的はほぼ達成できた。当該年度では、高温媒体に固有な弾性波の速度分散、減衰に起因する応答遅れを考慮したAE原波形解析システムを完成させた。すなわち、レーザ超音波法で測定した高温媒体の縦波速度と減衰分散から応答遅れ関数を導出し、仮定した破壊のダイナミックスと第二種グリーン関数、応答遅れ関数をたたみ込み積分して面外変位を計算し、距離減衰を補正する。計算変位と実測変位が一致するまで原波形を仮定し直して原波形を求める前身法である。幅広AISI304鋼板に5個の開発センサーを装着し、600Cでの混合溶融塩化物(都市ごみ模擬塩)による割れ(高温応力腐食割れ)のAEをウエーブガイドなしに直接モニターした。高速破壊によるAEを多数検出し、音源位置評定、縦波ポラリティーによる破壊モードの推定、原波形解析による破壊速度の推定を行った。その結果、高温溶融塩化物によるSCCでも、極めて高速で複雑な破壊が発生しており、その頻度は低温塩化物水溶液(140C MgCl_2溶)によるSCCに比べてはるかに多いことを明らかにした。この事実は、SCCのメカニズムについて再検討する必要があることを示唆している。温度を変動させた実験(未発表)や残留応力を持つ試験片に関する実験結果から、有害金属(Pb,Zn Cd)による粒界凝集力の低下、粒界余溶融の可能性など、これまで検討されなかった粒界性状について今後更に検討する必要があることを指摘した。
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