研究概要 |
本年度は、III-V族化合物半導体の一つであるInSbの{111}A,B-(2×2)表面を基板として取り上げ、その表面垂直方向の構造解析を行なった。この両表面に対しては、それぞれ、In-vacancy buckling構造((111)A面)および、Sb-trimer構造((111)B面)が広く認められている。しかし、その表面垂直方向に関する原子座標は未だ決定されていない。そこで、反射高速電子回折法(reflection high-energy electron diffraction ; RHEED)が、それに関する高い精度での情報を与えることに着目し、これを用いて当該物資の表面垂直方向の原子座標を決定した。 本系に対するRHEEDによる構造評価は、rocking-curveの測定・解析を通して行っ。本研究では、当該表面の構造解析に先立って、まず、その原子配列が完全に確定されているSi(111)-(7×7)表面に対してrocking-curveの測定を行い、過去の実験結果との一致を確認することにより、本測定システムの性能をチェックした。次に、InSb{111}A,B-(2×2)表面に対して、rocking-curveの測定ならびに、その強度解析を行った。その結果、(111)A表面では、最表面のIn原子層が約0.8Å程度バルク側へ変位していることが明らかとなった。この変位の割合は、GaAs(111)A-(2×2)のGa-vacancy buckling構造のそれとほぼ同程度である。一方、InSb(111)B表面においては、Sb-trimerの下の原子層が表面垂直方向に関して大きく変位していることが判った。このような一波条件下でのRHEED強度解析は、本研究ではじめて化合物半導体表面の原子配列の評価に応用されたものである。
|