研究概要 |
本研究では、反射高速電子回折法(RHEED)を用いて、III-V族化合物半導体であるInSbの{111}A,B-(2×2)表面の構造解析と、同表面上におけるIV族元素半導体(α-Sn)薄膜の動的成長過程の評価を行った。その結果を以下にまとめる。 (1)RHEEDのrocking curveを動力学的回折理論に基づいて解析することによって、当該表面の表面垂直方向に関する原子座標を決定した。In-vacancy buckling構造を持つInSb(111)A-(2×2)表面においては、最表面のIn原子が、理想表面のそれと比べてバルク側へ大きく変位(0,8Å)しており、一方、Sb-trimer構造を持つInSb(111)B-(2×2)表面に対しては、Sb-TrimerがInSb(111)B 理想表面から表面垂直方向約2.0Åの高さに位置することが分かった。 (2)当該表面上におけるα-Snの成長過程をRHEED強度振動法を用いて動的に観察した。RHEEDの電子線視斜角をバルクの222Bragg条件を満たす約0.7度とした時には、(a)Sn/InSb(111)A系では、RHEED強度の初期増加の後、二原子層(BL)周期の振動が繰り返し出現し、(b)InSb(111)B上では、Snの膜厚が6原子層以下の時にはSnの単原子層(ML)周期の振動が、それ以上ではBL周期の振動が出現した。この条件下でのRHEED強度には主に表面の幾何学的構造が反映されるため、(a)に見られたRHEED強度の初期増加は、Snが基板のIn-vacancyサイトに優先的に吸着したことによって、表面がより平坦化されたことを示しており、一方、(b)に見られたML周期は、基板のInSb(111)B面からSn成長最表面へ偏析したSbが表面活性剤として働き、Snの表面拡散を抑制したために起こったものと解釈される。
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