研究概要 |
本年度においては、原料ガスとして、TiCI_4,AICI_3,NH_3,H_2を用い、種々の成膜条件(基板温度、ガス組成)において、TiN,AINの単独膜、及び複合膜を不透明石英管反応器内壁に析出させた。反応器の管軸方向における膜厚分布、複合膜の膜組成分布をSEM-EDXにより測定し、膜形態の観察も行った。また、X線回折による膜結晶の構造解析を行った。これまで得られた結果は以下のようにまとめられる。 1)TiN膜は入口の低温域から析出し、結晶性が良好であり973Kにおいては(100)面配向した膜が得られた。析出温度とともに、膜厚ピークは入口側に移行し、その高さの増加がみられた。反応器内の出口付近以外においては、粒子の堆積は観察されなかった。 2)AIN膜はTiN膜に比較し、やや高温(管下流位置)において膜厚ピークを有することが分かった。また、1000K以上の高温領域においては、多量の粒子の堆積が観察された。 3)複合膜の膜厚分布は、上流域においては個々の膜厚の和として表せると考えられる。しかしながら本研究で行った析出条件においては、AINの場合と異なり粒子の堆積は生じなかった。また膜のTi/Al組成に関しては、主に下流域において膜厚の比から予想される値と異なっていた。複合膜は緻密であり、層状に剥離する傾向があった。また一般に単独膜に比較し、結晶性が悪かった。 4)複合膜においてTi/Al組成比0.7の場合、1273Kで14.4Ksアニールすると、TiNとAlNとが存在していた。一方Ti/Al=1.7の場合、Ti_2AIN相と考えられる相が得られたが、今後膜のTEM観察を並行し、この相の生成の確認を行う必要がある。 本年度の研究において、当初の目的としていた、成膜速度や膜組成の制御性および目的とする三元系化合物の発現に関する基礎的指針を得ることができた。
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