研究概要 |
本研究では、Ar吹き付け、機械攪拌下での溶融アルミニウムの脱水素実験を行ない、溶融アルミニウムの脱水素速度に関して物質移動の観点から検討した。また、真空吸引脱ガス法(VSD法)の溶融アルミニウムの脱水素への適用について基礎的観点から検討した。以下の結論が得られた。 (1)酸化皮膜を伴う浴表面からの脱水素速度は、一次の速度式で整理でき、見かけの物質移動係数k_Hは、メタル側の物質移動係数k_<L,H>と酸化皮膜内物質移動係数k_<OX,H>を考慮することで整理できた。この事より、溶融アルミニウムの酸化膜を伴う浴自由表面からの脱水素速度はメタル側の物質移動と酸化膜内の物質移動に律速されていると考えられる。 (2)メタル側物質移動係数k_<L,H>と攪拌動力密度εの関係は、メタル側物質移動について表面酸化皮膜近傍のメタル側に“Zone of damped turbulence"を想定した乱流理論から導き出される関係と定性的に一致し、このことから、攪拌動力密度の増大に伴うメタル相の攪拌の強化がメタル側界面近傍における水素の物質移動を促進すると解釈できる。 (3)浴表面への吹付けArガス流量を変化させても、脱水素速度は増加せず、本実験条件下ではガス側の物質移動は律速段階ではない。 (4)メタル温度が上昇するに伴い、脱水素速度は増加し、定常水素濃度も増加する。これは、酸化皮膜内抵抗が温度上昇にともない減少することで定性的に説明できる。 (5)マグネシア質浸漬管を用いたVSD法の実験において、溶融アルミニウムの脱水素速度が促進される場合のあることが観察された。 (6)VSD法による溶融アルミニウムの脱水素速度は、浸漬管-メタル界面に介在する酸化皮膜内のH^+の移動によって律速され,浸漬管素材とAl浴および酸化皮膜との反応による酸化皮膜の何らかの性質の変化がVSD法の効果の有無を決めると推定される.
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