研究概要 |
水素とメタンを主原料とし,有機金属化合物ガスを添加金属源とした,高周波プラズマCVD法による金属添加ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜の作製と,その特性評価を行った.はじめに,有機金属化合物原料としてテトラメチルスズ(TMT)を用い,スズ添加DLC薄膜を作製した.作製膜中にスズと炭素の直接結合が確認された.原料ガス中のTMT濃度を変化させることによって,膜中のスズ濃度を制御可能であった.TMT濃度が約0.2%以上になると,ナノメーターサイズの微小なスズクラスターが形成された.スズ原子を凝集させることなくカーボンネットワーク中にドープするためには,TMT濃度は0.2以下でなければならず,それに対応して,膜中のSn/C原子数比は最大約0.1となった.電気抵抗率は10^3Ωcm台の値を示し,スズを含まないDLC薄膜の電気抵抗率(約10^7Ωcm台)よりはるかに低くなった.また光透過率はTMT濃度が高くなるにつれて,赤外域の透過率が減少した. 次に,高周波プラズマCVDとスパッタリングのハイブリッドプロセスにより,金または銅を添加したDLC薄膜の作製と特性評価を行った.金を添加したDLC膜中では,金は金属クラスターとしてのみ存在し,炭素との直接結合は観測されなかった.一方,銅を添加した膜中で,炭素-銅の直接結合がわずかに存在することが確認された.添加金属濃度は,高周波電極上へ設置する金属チップ数によって制御可能であった.無添加状態では10^7Ωcm台であった電気抵抗率が,金属濃度の増加とともに減少し,20at%の金属濃度で10^4Ωcmとなり,半導体特性を示した.さらに,金濃度36at%では,1Ωcmまで低下した.金属添加により,8桁という広範囲にわたり,電気抵抗率を変化させることができた. これらの結果は,金属添加がDLC薄膜を絶縁性から半導体性へと変化させ得ることを意味する.本研究の成果から,金属を添加することによって,DLC薄膜をアクティブエレクトロニクスデバイスへ応用する可能性が示された.
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