研究概要 |
平成9年度(2年目)は第二元素存在下におけるZn電析の臨界電流密度の変化を調査した。前年度に検証した機構において,第二元素は,(A)電析または触媒として作用し初期陰極面の最小水素過電圧を変化させる,(B)高電流効率で電析し水素析出の部分電流密度を減少させることなどによって,臨界電流密度に影響を及ぼすことが推定された。そこで,本年度においては以下の実験により上記推定の確認を行った。 (1)微量の第二元素イオン(SCN^-)を含有した硫酸塩浴におけるZn電析の臨界電流密度…第二元素が電析しても,その電流効率がきわめて低く,臨界電流密度以下の電解電流は全て水素析出に使用される状況で,上記(A)を検証した。その結果,SCN^-は電析せず水素析出の触媒として作用し,臨界電流密度を上昇させることが分かった。 (2)多量の第二元素イオン(Cd,Mh)を含有した硫酸塩浴におけるZn電析の臨界電流密度…臨界電流密度以下で第二元素の電析電流密度が無視できない状況で,上記(B)を検証した。その結果,Znより貴なCdは電析して臨界電流密度を上昇させ,Znより卑なMnは電析しないため,臨界電流密度を変化させないことが分かった。 (3)複数の第二元素イオン(鉄族金属とSCN^-)を含有した硫酸塩浴におけるZn電析の臨界電流密度…臨界電流密度に影響を及ぼす第二元素の相乗効果を調べることによって,各第二元素の作用機構の確認を行った。その結果,SCN^-は鉄族金属であるNi,Co,Feの析出触媒として作用し,臨界電流密度(転移電流密度)を上昇させることが分かった。
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