本研究では、新規な反応を伴った分離手法を提案し、その有用性を実証することを目的としている。本年度は新規分離システムを提案し、その有効性を界面活性剤をモデル溶質として検討した。本システムでは、感温性ゲルを多孔膜細孔表面上に固定し、温度変化によるゲルの親疎水性変化を利用し、わずかな温度変化で界面活性剤など疎水性有機物を膜中で吸脱着させながら、透過側に濃縮する。温度をパルス的に変化させ、(1)収縮時:疎水結合による供給側から膜への吸着、(2)膨潤時:透過側への脱着の2ステップを繰り返し、透過側に膜へ吸着する物質のみパルス的に濃縮精製する。 1)環境応答性ゲル薄膜の作製:ポリエチレンおよびポリプロピレン多孔性基材の孔中に、プラズマグラフト重合法を用い感温性ゲルであるポリn-イソプロピルアクリルアミドを成長させることに成功した。 2)ゲル薄膜の感温特性制御:作製したゲル薄膜の温度変化による膨潤・収縮挙動を純水透過性より評価した。感温性変化は極めて速く、数十秒以内に膨潤・収縮変化を完了した。また、感温性ゲルの膨潤・収縮により界面活性剤の吸脱着変化を確認した。 3)界面活性剤の吸脱着を伴う透過他の評価:水中に微量溶解する界面活性剤を供給液とし、本ゲル膜により選択的吸脱着透過を行い、特定の界面活性剤の回収を行った。今回提案した新規な分離手法の概念に従い、透過側で界面活性剤がパルス的に濃縮した。今後は、ゲート膜と組み合わせ、より効率の高い分離システムを構築する予定である。
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